未分類

池田美弥子展

池田美弥子の沖縄をテーマにした個展が今日から。
数年前、沖縄の百貨店で沖縄を描く日本画展を企画したことがあった。画廊にご縁の数人の画家たちにお声をかけ、ほとんど手弁当のような展覧会だったが、気持ちよくこの雲をつかむような話に乗ってくれた一人が池田美弥子である。
以来、こつこつと取材を進め南国に通い続けてきた成果を今展で披露してくれた。主な取材は本島北部の喜如嘉。芭蕉布の材料である糸芭蕉が生い茂る地に滞在し、スケッチを重ねてきたという。住む人の気配が色濃く漂う赤瓦の家を俯瞰し、縁側や店先に島の暮らしのあれこれを想像させて楽しい絵に仕上げた。
地面の色は赤。今展で一番目につく色である。なぜ赤なのか聞いてみたところ、初めて冬の季節に沖縄を訪ねた折り、夏の強い日差しでは見えなかった土の色の印象だという。なるほど日中は光が強すぎてほとんどの色は消し飛んでしまう。冬になって幾分光が弱くなった頃、見えなかった色が出てくるというのも不思議なワザだが、沖縄ではさもありなん。
しかもこの赤を使ったことで、逆に南国のエネルギーが横溢し、誰にも真似できない池田ワールドが出現した。池田の故郷・新潟では冬は当然雪に閉ざされ、白と黒の世界になる。万物が枯れ果てる冬のさなか、沖縄の土は本来の赤さをとりもどし、白さから免れるという発見は、ひとえに池田の観察眼のたまもの。B型的乱暴力を駆使ししつつ、この「赤」のリアリティを絵にしたことは特筆すべきだろう。いきいきとした島の生命力がこの赤によって象徴され、神話的な世界をも伴った楽園の様相を描き出した、とも。
武蔵美大を卒業する頃には俯瞰する構図の絵を描いていたという池田美弥子だが、近年は学習院大学で源氏物語絵巻のゼミを聴講するなど、絵巻の空間の研究にも余念なく、ますます俯瞰の腕に磨きをかけているらしい。けっして器用とはいえない作風ながら、独自の世界を切り開く突進力は彼女の大きな力となり、今展でも思いがけない世界を展開してくれた。さらに突き抜けて、未知なる物語を見せてほしいと願ってやまない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です