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松村響子展ー十七字の世界

松村響子の絵画と俳句による展覧会が今日から。1994年武蔵野美大日本画科卒業後、教職につきながら制作を続けてきた。
また、俳句の方はお母様が俳句結社の主宰という環境で育ったため、若いながら俳誌から原稿依頼があるほどの腕前。今展はこの二つの表現手段を交差させる初めての試みである。
いわゆる俳画というものが、絵と俳句が一緒の画面の中でつかずはなれずの絶妙なバランスでなりたつ表現とすれば、彼女の試みは絵は絵、俳句は俳句として独立させた上で対比してみようとするもの。
個展の案内状の作品に添えた句は「月光の国を棲み家に守宮かな」。墨のたらしこみの地に、一筋の光が射し守宮の背を照らしている絵と呼応して、絵と俳句双方の味わいを深めている。
今展のテーマはひかり。淡く濃く色々な景を映し出すひかりは、今展の作品すべてに透明なきらめきを与えている。特筆すべきは前個展から引き続き挑戦した墨の仕事。濁ってしまいがちな墨の重ねに細心の注意を払いつつ、奥行きのある画面に仕上げてきた。
おりしも明日は十三夜。九月の十五夜とは趣きが違い深まり行く秋を惜しむ名残の月の頃だ。画伯は金泥と銀泥が施された薄明るい雲間に漂う月の絵に、「寂しさを少し抱えて十三夜」という句をならべた。月の下には色々なドラマが転がっている。まして十三夜の頃においてをや。
このように絵のもつ静的な印象と詞が奏でるドラマティクな印象が交差する時、もう一つの世界が立ち上がる。今回の試みはその可能性を示唆して興味深いもの。絵画と詞が切り離されて久しいが、遠い呼び声に促されて今展のような仕事が若い作家のなかから出てきたことがうれしい。二兎と思わず一つの月の裏と表と思ってそれぞれの道を精進してほしいもの。いずれ一つになる。

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