個展

松谷千夏子展

松谷千夏子展初日- 連休明け一番、五月の薫風を感じさせる松谷千夏子展が今日から。 例年この季節は松谷画伯とともに明ける。季語でいえば、八十八夜、初夏、青嵐、若夏etc.。彼女が幼少の頃を過ごしたカナリア諸島にもこのように爽やかな偏西風が吹いていたのだろう。千の夏と書いて千夏子。彼女が生まれた時、ちょうどお父上は赤道直下にいたのだという。それに因んで付けられた名前と聞き、なるほど、と得心。 その後移り住んだ場所も鎌倉と海に御縁のある場所である。ものこころついて、初めて見た風光は常に海辺であった事が彼女の色感を決定したといっても過言ではないだろう。 どこか物憂い風の中に身をまかせつつ彼女の人物たちは遠く目線を彷徨わせる。等身大を越えて大きく引き延ばされた顔の彼方に、海はその青色をわずかにのぞかせている。この静けさは一体何だろう。風に揺れる木の葉を見ていると、いつの間にか音が消え、異界に連れ去られてしまいそうになる、そんな漠然とした不安と陶酔。あやふやなその感覚が画伯の絵と一緒にいるとよみがえってくる。 極端に減筆された線と色の中で、「記憶」として留められた残像が立ち上がるような、虚実の境目を彼女は描く。わずかに彩色された作品たちは、見るものの心の中で色を得て生き生きと動きはじめるのだろう。 現実の画廊の中も虚々実々。搬入隊の立野たっちゃんが色付きのドレスに身を包めば、そこはもう怪しい魔窟。現実の女たちは色を失って影と化す。ドイツ出張から帰ったばかりなのに、搬入に呼び出されキャプションまで徹夜で作らされたたっちゃんよ、ありがとう!の気持ちをこめたこの撮影、船頭が結構多くてすんばらすぃ〜画像に。公開できぬ数々は、皆様の中で補ってもらって、と。

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