人物

高村木綿子展 揺れるまなざし

個展デビュー戦の高村木綿子画伯の御紹介を。
武蔵野美大日本画科を二年前に卒業の25才、初めての個展に挑むの巻。そもそもなんで知り合ったかというと、武蔵美教授の内田あぐり画伯邸での大宴会で。たまたま池の大掃除の日だったその日、武蔵美ーずの学生たちも内田邸におよばれ。悦子がいけば抱腹絶倒!・阿鼻叫喚!・空前絶後という!!!!だらけの宴会に、ひっそりと目を白黒させていたのが彼女。
それでなくてもびっくりしていた高村画伯に、あぐり画伯の鶴の一声「個展やりなさい」。それから無我夢中の日々が続いたらしい。時にはパニックに陥りながら、なんとか仕上げてきた11点の作品は、なんとも独特の世界。
黄昏れ時に神隠しにあったような異次元の少女たちがならぶ空間は、わが画廊ながら不思議な空気に。いったいこの外れっちゃったものたちのこころもとなさはなんだろう。おおげさにいえば、白昼の孤独のような感じ。立ち尽くすことしかできない存在のリアリティを思う。エゴン・シーレのような絵肌、つげ義春の行き暮れ感、そもそも画題が「落ちた音がしました」って?
本人も美少女ながら、不思議な魅力を湛える絵のなかの人物。一見拙く思える世界の、なんと詩情に満ちていることだろう。
じっーと耳を澄ませば、耳のなかに聞こえてくる「しーん」という音みたいな絵だなぁ、とこちらも詩心発動。若いながら、ちゃんと自分の世界をもっている彼女、これを如何にのばしていくか今後がまたお楽しみ。
初日の今日は、そもそもの縁を取り持って下さった内田あぐり画伯が令嬢の亜里ちゃんと一緒に早々の御登場。その宴会にいた尾長画伯も。バイト先の着物の店の同僚・綾ちゃんがお茶だしなどてつっだってくれてにぎやかに。ちなみに綾ちゃんは「夏の庭」のモデル。着物を着なれているだけに、キュートで優雅。
はんなりのんびり、ここは江戸?という気分でいたら、何と江戸版画六代目高橋工房版元高橋由貴子女史の御来廊。同じ江戸でも、版元の英才教育を受けた女史、すっきりぴんしゃん粋だねぇ、の世界。久々に奉公という言葉を聞いて、みんな驚く。さすが磨きに磨かれた美意識の見事さ、きちんと絵を見て下さり「鶏頭を描いてくれてうれしい」と愛惜する世界への共感を述べてくださった。
ともあれ、画廊での上半期最後の展示となる高村木綿子展、無事幕をあけたことを喜ぼう。ふぅ~やれやれ…。

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