最近、越中風の盆と並んで紹介される事の多い、羽後は西馬音内の盆踊り。この時期に当地の旧家・阿部九兵衛商店の座敷と店頭をお借りした移動ギャラリーも今年で二年目。佐藤友子女史が総合プロデューサーということになれば今年も盛り沢山のイベントが。
なにせ、盆踊りは篝火の映える午後七時半から深夜まで。昼行きどころのない御見物衆のために、いろいろな企画を用意。
今年は照喜名隆充画伯の、知事賞受賞絵灯籠と、吉川優画伯の軸装展を阿部家170年の由緒ある座敷で。地元の画家・三谷綾子画伯のパステルと水彩画にくわえ、松岡焼きの高橋洋子さんの陶芸作品も展示。好評をはくした。その他、西馬音内盆踊りの特徴とも言える、古い端縫(はぬい)衣装もずらりと。
その上今年は、茅ヶ崎の劇的朗読家・松川真澄女史が、取材のため来西、店頭で一人語りをして下さった。なんでも秋田の大学に赴任中の御夫君・平氏の演出で秋田弁によるシェイクスピアを演ずるという。その出だしにこの踊りを、との事。踊りの名手・阿部千賀子さんに急遽特訓を受け、あろうことか悦子まで踊りの輪に飛込む。何年見ていても覚えられない難しい振り、しかも時間がなくて一番しか教えてもらってないのに…!松川女史の芸にかける意欲に感心しつつ、この道が嫌いではない悦子、しっかり踊子に配られる手拭いゲット。
三日しかない踊りの夜。この狭い町に十何万人くるのやら。幸い二階が、桟敷のわが阿部家。二日続けて倉本聰氏御一行を迎え、一緒に絵を差し回した座敷で、御当家刀自77才おばぁちゃまと孫のたか君の踊りをたのしむ贅沢を。艶冶な踊りの身についたおばぁちゃま、踊りは現役でその辺の若手より色っぽい。
実は、この祭りのあと取り壊されてしまうこの家。今回が、170年の歴史をもつ阿部家の座敷を彩る最後の饗宴になった。踊りが果てた最後の最後に、笛方が登場。阿部家の皆さんだけで静かに座敷を舞われたのがなんとも美しく印象に。
片付けて帰るスタッフたちと撮った最後の画像、悦子の脇に白い雪洞状のものが見えるが、これは???
御先祖様のきた着物の端を縫い合わせて、御先祖を迎え送るための霊鎮めの盆踊り、きっと喜んで出て来てくれたのかも…。ここは一句 祭笛 火の粉は闇に 戻りけり 遠見