深紅の薔薇の女王・山田りえが一年ぶりに登場した。越畑喜代美同様当画廊最長不倒距離を更新しつつ、デパートや画商さんの企画展に引っ張りだこの人気画家とあいなった。多忙からか一昨年昨年は腰痛に苦しんだが、養生の甲斐あったか今年は快調。繊細なタッチを画面に加えつつ山田りえらしい切れを見せてくれた。 山田りえは1961年京都に生まれ、1983年多摩美大日本画科を卒業すると神奈川県立西湘高校に奉職。勤務の傍ら制作をはじめる。その後約十年二足のわらじをはくが、画作に専心するため職を持し旺盛に発表を始め今に至る。 12回目を数える今展では秋草や山野草など自宅の庭で育てた花々を描いた。初回から数年は個展時期が春だったせいか春の花々のきらびやかな色彩が豪華な展覧会だったが、近年は調整上秋の時期のせいか、比較的秘めやかな彩りの印象だった。荒々しいまでにエネルギッシュなタッチから、画面の隅々まで気配の行き届いた調子に変化し、堂々の風格を湛えるようになってきた。 金箔地に赤の薔薇と緑の葉叢という取り合わせは、ともすると下品になりがちな派手な取り合わせだが、今展の山田りえの真骨頂はいとも簡単にそれをすっきりとモダンに変えたことだ。その間然するところのない切れ味は誰も真似出来ないところ。かつて暑苦しいほどに濃密だった作品の空気が、クールに張りつめたものに変化して我々に迫ってくる。今展では小品ながら「あけび」の空間処理に奥行きと成熟をみた。 画家も刻々と変化する。毎年見逃せないその変化は一年では気がつかないが十年の歩みを振り返ると歴然となる。当画廊の十年選手は、それぞれにその跡を見せて来た。無我夢中で制作に追われながら残した軌跡はある時は停滞しある時は飛躍する。年々歳々発見し挑みながら山田りえの嚢中にはまだまだ画想の種が詰まっている。それをどう育んでいくのかがこれからの仕事だ。 画家の師の加山又造氏は、なんどもその画風を変えている。ただそのどれをとっても加山又造の仕事である。先達の画家の残した足跡は大きな道標だ。ある時は風景、ある時は裸婦、ある時は花鳥、ある時は水墨とその豊かな才を惜しまなかった。もちろん師は師、であるがどこかでそのDNAを受け継ぐ資質が山田りえにはある。いよいよ50代をま間近に控えてこれからどういう画世界を紡いでいくのか、かたずをのんで見守りたい。