個展陶芸

藤井隆之陶芸展

2002年のデビュー以来、3度目になる当画廊での藤井隆之個展がはじまった。1973年広島で生まれ、東京芸大工芸科で陶芸を専攻した藤井隆之は研究生の頃からその卓抜な彩色の技術で定評があったが、個展デビューするやその人気に火がつき、瞬く間に若手陶芸家として最も作品が手に入れにくい作家の一人となった。
伝統工芸展や高島屋・三越・京王など各百貨店で作品を目にした方々からの熱い視線を、今回はより強く感じることに。初日開廊を待ち構えてドアの前に何人もの列ができたのも驚きだが、なかなか届かない作品を待ち構えて、何度も足を運んで下さったお客さまに改めてお礼を申し上げたい。また遠方からいらして下さった方がたにも。
本人はしばらく窯から離れられず不眠不休の作陶生活のなか、初日のにぎわいをしらないが、誠実に手抜きのない作品を仕上げてくれた。蓮の大鉢のたっぷりした量感と品のいいマットな色調は見事の一言。また最近手がける黄磁の彫りの切れのよさは、この分野での未知数の可能性を示すもの。さらに透明釉と無釉の間の半透明ともいうべき微妙な釉も加わって、35歳という年齢をこえた卓抜な風格を感じさせる作品も。

さまざまに挑戦し、一つ一つの完成度に拘るあり方は、学生の頃も今も変わらず、深化し続けている。今展では吹き染めの絵に一段と美しさが加わり、爽やかな一陣の風が作品の回りにただようようだった。陶器というジャンルをこえて美しいものがそこにある、という存在感を示せる作家はそう多くはあるまい。
藤井隆之の目指す頂点の美に、一歩一歩歩むだけだ。その作家の最前線の仕事を今、この場で大勢の方と共有しているーその思いが今回特に強かった。リアルタイムに窯から出て来たばかりのほかほかした作品を展示する喜び。それを見る喜び。手にする喜び。陶が生きている、と感じる瞬間だった。
作品にオーラのようなものがある、とすればそれはこのライブ感ではないだろうか。エネルギーにあふれ生きている、という感触こそ、作品の美しさと相まってここまで人を夢中にさせる訳だと思う。よかれ悪かれ作家の手から生み出されたものは正直に作品に反映される。藤井隆之の無窮を追い求める魂が、作品という一個の塊となった。そんな展覧会だった。また、大きくなって帰ってきてほしいと心から願うものである。

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