ニューヨークの風・板東里佳展
最後に摺り上げた一枚を携えて、ニューヨークから帰国した里佳画伯。徹夜仕事を続けて作品を運んで来てくれるフレーマー佐竹氏を待つ間、テリーに髪をカットしてもらうことに。 前日余裕の悦子は別にして、締め切り作品をもって登場のみそそ画伯といい、時差ぼけ中の里佳画伯といい、みんな寝ていない状況ながら、ご飯となれば元気は別。テリーのスタジオ近くの焼き鳥屋さんで、搬入前の歓迎式典。
もともと美人の里佳画伯、テリーのカットでさらにバージョンアップして初日の舞台に。そういえば初めて会った17年前もショートで凛々しかったけど、その時と変わらぬ美しさはリトを摺るという力仕事の賜?
今年三月にニューヨークで会った時に手掛けていた、「雲シリーズ」が試行錯誤を経て見事に摺り上がった今展。中でも圧巻は、「When the Saints go Marchin’In」だろう。最後まで手掛けていただけあって、モノクロの画面に華やかな色を感じさせる作品となった。突き抜けたような悲しみに似た美しい光の先に遠く宇宙がみえる。同じく「Jacob’s Ladder」もまた雲を通して降り注ぐ光を描いているが、神を信じない人にもなにか恩寵を感じさせる自然のドラマに果敢に挑戦した意欲作だ。
海に近いブルックリンに住んでいるから、このドラマに立ち会う機会が多いとはいえ、日々の暮らしの中で空を見上げることは以外に少ない。日常の光景をモチィーフに普遍の美を紡ぎ出す里佳画伯ゆえの視点なのだろう。
「Chain light」シリーズも、アトリエの窓のブラインドから差し込む光の揺影から画想を。また、時ならぬ四月の雪に残る車の轍を描いた作品は、まさしく天からの贈り物。日々、刻々と変わる事象から啓示を受け取り、透明感ある里佳画伯の世界へ昇華させる感性は類い稀なものだと思う。
また、夫君板東優氏の故郷・帯広の「千年の森」を描いた「Afternoon Shadow」は青の陰影に乾いた抒情を湛える。この青もまた年々深みを加えて素晴らしい発色。里佳画伯の、この一年の精進がこれら作品の上に読み取れてうれしい。
久々日本上陸の里佳画伯を迎えて画廊には、お馴染みのメンバーが。もちろん里佳画伯の高校時代の同級生、ご存じスーパーりこちゃん、住宅関係の本で最近ベストセラー作家の仲間入りをしたノリちゃんも忙しい中駆け付けてくれた。ニューヨークで里佳画伯にお世話になった間島画伯とトシ君画伯は、偶然にも予備校仲間。世間は本当に狭いよね。みそそ画伯のトマトを堪能した後は、最後にかけつけたWeb大里っちの案内で、勝どきの老舗へ。これぞ日本の魚!編を里佳画伯とともに。