山下晃伸写真展

3月4日(火)~11日(火)

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「moving still life」より

この作品は暗闇の中で、その時の天候によるが数分~数十分を超える長時間の露光によって撮影されている。目で直視するだけでは見えない夜光ならではの世界が、カメラを通して、初めて現われてくる。夜光写真の魅力を引き出した作品である。
夜光による表現の世界は、人工照明の発達やカメラ及び写真に関わる技術の飛躍的な進歩により、これまでにない表現領域としての可能性を有している。夜光写真の撮影は周囲の光源の弱い状況下で、三脚の使用がなければほぼ不可能に近かった段階を経て、カメラの高性能化、ISO感度の高感度化などにより、大きな変化が生じている。特に三脚を用いた長時間露光による撮影では、どのような微弱な光源の下でも夜光写真の撮影が可能になり、そのことによって撮影する被写体も変化している。夜の屋外で撮影することが難しいとされる人物や動くものに対してストロボを用いない自然な撮影が可能となってきている。
今回、掲載した「moving still life」と名づけている作品の被写体は日本各地にある公園の中で特徴の強い怪獣の形になっている遊具やオブジェを選んでいる。この公園の遊具、オブジェは、インターネット上のブログやツイッターなどで公開されている口コミ情報を参考に、夜実際に足を運び、その撮影条件を見て被写体を決めている。
この被写体を、昼の光ではなく夜の光を使い撮影することでしか出ない表現や色合い、出来事を一つの形にすることを考え、被写体が公園のどこにあるか、街灯の数がどれだけあるのか、撮影に行く日の天候はどうなのかなどを全て見極め、写真に収めている。
この「moving still life」の作品の撮影は2007年から続けており、100ヶ所以上撮影した中から選出して展示をする。全国にはまだ私の知らない公園が多数あるので、時間をかけて撮影を続けていきたいと考えている。
作者略歴
1984年 生まれ
2007年 3月  東京工芸大学 芸術学部 写真学科 卒業
2009年 3月  東京工芸大学 大学院 芸術学研究科 博士前期課程 修了
2013年 3月  東京工芸大学 大学院 芸術学研究科 博士後期課程 修了
博士号(芸術学)取得
現在  写真家として活動中(株式会社AKYA代表取締役)
就労継続支援B型施設「飛翔クラブ」写真撮影講師
受賞歴
2006年10月  フォックス・タルボット賞 第二席 受賞
2007年10月  富士フォトサロン新人賞 2007 受賞
2009年 3 月  東京工芸大学 後援会長賞 受賞
2010年 3 月  エプサイトギャラリースポットライト対象展 選出 など

展示歴
2005年 「night urban district」          アートスペース銀座ワン
2006年 「follow」          アートスペース銀座ワン
2009年 「moving still life~公園の夜に見えたもの~」 Mott gallery 2F
2010年 「moving still life~公園の夜に見えたもの~」   epsite ギャラリー
「新宿」                フレームマンギンザサロン
「新宿」                     銀座・芹川画廊
2012年 「夜光」                フレームマンギンザサロン

その他 多数参加経験あり


山下晃伸
http://akya.jp/
mail@akya.jp

戸張良彦写真展ー「十勝rera図鑑」

東京生まれながら十勝在住30年という戸張良彦の銀座初個展が開かれた。
日大芸術学科写真専攻卒の戸張が帯広に縁ができたのは卒業して間もない頃。弱冠24歳にしてかの地に渡り、鍬の代わりにカメラを携え営々と耕した大地は、いまこの真夏の銀座にあって涼風を送ってくれている。
最初に目にしたのは2004年に発表した「黒と白ノ覚醒図鑑」のシリーズだった。凝結し続ける「黒」と拡散し続ける「白」の接点が絵画的な余情を漂わせていて美しい写真だと思った。
今展でもこの延長の仕事を見せてくれるのかと楽しみにしていたところ、意外にも「青」の諧調が絶妙な「ノカビラマトリックス」という氷結した気泡を接写した作品をメインに展開してきた。聞けば個展開催が決まってから得た素材だという。
不思議なことに、いつも通っている道にある素材なのに目に入らない時は気がつかないもの。今回も突然目の前に現れたのだとか。ノカビラ湖というダム湖が氷結して出来た断層に封じ込められていた気泡の摩訶不思議な形象を発見したとき、「十勝rera図鑑」はスタートを切った。
そもそもreraという聞き慣れない言葉はアイヌ語で「風」を意味するらしい。零下30度という厳寒期の十勝を渡る風が作る様々な形象を、現場で記録する。この丹念な仕事を図鑑のように並べたのを見た時、「自然は芸術を模倣する」というどこかで読んだ言葉が浮かんで来た。アーティストは自然から多くのものを学ぶが、自然もまたあらかじめわかっていたかのように芸術を真似するという、この逆説を思い出したのだ。
すでにそこにあるものーただそれを見いだすのはヒトの力だ。見えるヒトの前にしか現れてこないものを戸張良彦はずっと探し続けているのだろう。今回は氷結した気泡という形で私たちの前に取り出してくれた。
この作品の前で見る人は何を思うだろう。ある人にはクラゲを思い、ある人は樹氷を想像する。実寸でわずか5cmに満たない世界が内包している世界は、写実を越えなにか細胞レベルのものに変化して私たちの遠い記憶をくすぐる。自分を生成する細胞を覗き込む「井戸」のような装置とでもいうのか。
帯広の風が作ったさまざまな形象が、有機体のように変化して色々なものを想起させていく「経験」をこれら作品群は提供してくれた。このreraシリーズが、さらに変幻自在に進化していくことを「図鑑」の採集者に期待しているところである。

甲斐扶佐義・写真展

京都の伝説的人物、ほんやら洞及びBar八文字屋主人にして写真家の甲斐扶佐義氏の「生前遺作集」発売記念展が始まった。生きながら遺作集というところが甲斐伝説の伝説たる所以であるが、ご本人は今日の止まり木も決めず風の向くままふらりと登場といった態。
とはいえ久々の東京、旧知の方々が待ち構えてお祝いの宴となった。甲斐氏の傍らには、八文字屋スタッフにして歌姫の北園紗世ちゃんが控え、アカペラで独自構成のミニライブを。母方が奄美という紗世ちゃんの唄声は島唄の小節のようにパワフルながら微妙。挑むような唄声に、甲斐氏ご友人のくまさんや八田氏がコラボして思いがけぬセッションの場となった。その合間を縫うように甲斐氏の相棒ニコンのシャッター音がする。そのさりげなさを見て、甲斐氏の作品の被写体が自然な訳が解ったような気がした。撮る方が構えていないと、撮られる方も構えない。素顔をさらして許している顔である。印画紙のむこうの美女たちそれぞれが多様な人生を抱え、魅力的に生きているーそれらはある時はBar八文字屋のカウンターの中の、ある時は猫を見に行こうと誘った街の路地での「一瞬」に過ぎないが、そこに留められた彼女たちの姿は永遠のミューズのようだ。
まして画廊中に張り巡らされたそれら「一瞬」の重層を眺める時、京都というフィールドを彷徨うように歩いた甲斐氏の人生が降り積もって作った「時代」ともいうべき空間になっていることに驚く。
1970年代から2007年までの数十年、彼が出会った膨大な数の人間たちを思う。すでに鬼籍に入った方々も含めて、甲斐氏の指がシャッターを押した、彼が選んだ人々だ。彼の指の正直さにまずは敬意を、そして甲斐氏が「生前遺作集」として改めて検証しようとした世界にわたしも分け入ってみようと思う。
甲斐氏が自分のプロフィールとして用意したものは以下の通り。
1949年大分生まれ。同志社大学入学するも即除籍。1972年、岡林信康らと喫茶店「ほんやら洞」開店。一旦抜けるが現在カムバック。1985年木屋町通りにヤポネシアン・カフェ・バー「八文字屋」開店。写真集「京都猫さがし」(中公文庫)。「笑う鴨川」(リブロボート)。「八文字屋の美女たち」(八文字屋本)。また、近日刊行予定に「青春のほんやら洞・京都`68~74(月曜社)。


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