線と余白の間「再び」-それぞれの結界
7.13(月)〜19(日)
4月8日の緊急事態宣言を受けて中断した展覧会の再展示です。
本展はかねてから「線」に卓抜な才を示している画家に「余白」の意識を問う展覧会をしてもらうべく準備してきたものです。
足立正平
立尾美寿紀
佛淵静子
独自に活躍する画家たちが、自分の結界をどこにどう結んでいくのか、比べてみることで更にそれぞれが際立つ事を企図しました。
以下、案内状に寄稿して下さった亜細亜大学准教授・立尾真士氏の一文を添えます。
絵画の「はじまり」とはいかなるものか。あるいは、はじめられた絵画に「おわり」はあるのか。
ともあれ、まずは線が刻まれなければならないだろう。原初が空白だとするならば、そこに線が引かれたとき、絵画は開始(はじまり)を迎える。点と点を結ぶ線がひと筆、ふた筆と延ばされ、交わり、ときに消され、重なり合う。幾多の線の複層が、界域を生む。
しかし、かたちづくられた界域が線に
充たされることは、ついにない。線を描き、界域をつくりだす筆はまた、余白を生み出す。空白に対峙し、作品の完成(おわり)へと至るために開始(はじまり)の線を刻む画家は、ひと筆ごとに、原初の余白を縁取るのだ。とすれば、絵画を眼差すときに私たちもまた、界域をかたちづくる線と余白のあいだの、そのたびごとの「はじまり」に邂逅しているのである。
三人の画家がいる。画家によってひとまずのところ完成(おわり)とみなされた作品たちは、それぞれが線と余白によってかたちづくられた界域である。と同時に、それぞれの界域が交叉し、結ばれ、或いは分け散じるとき、そこにまた線と余白があらわれる。それらの線と余白のあいだへと誘われた私たちは、新たな原初(はじまり)の痕跡に触れるであろう。
絵画の界域が、空け開かれる。
西村亨人形展 「私を個展に連れてって」
2020.7.6(月)〜7.12(日)
12:00〜19:00 最終日〜17:00
毎年恒例の夏企画となった西村亨展。
1985年多摩美大油画科出身、卒業後は日本デザインセンターでイラストレイターとしてバブル期を過ごすも、押し寄せるCG化をよしとせず造形作家に転身する、
という経歴。
フレッシュネスバーガーの🍔看板メニューは昨年まで全て描いてきたという凄腕は、人形(solid doll)制作にも遺憾無く発揮され、セクシーで、挑発的な女性像を中心に発表を続けている。
本展では、スタイロフォームに石粉粘土で肉付けし、リキテックスで着色した魅力的な西村ガールズが、涼げな出で立ちで皆さまをお迎えする。y
日本画八人展「熱と凛」 produced by modernart
金属造形作家 征矢 剛 作品展「奏」
2020.6.22(月)〜28(日)
1992年多摩美大彫刻科出身、その後銅人形作家・赤川政由氏に師事した征矢剛。彫刻とも工芸とも人形とも少しずつずれつつ自らを金属造形作家と呼ぶ。
主に鉄を溶接して作る虫の形状をした作品たちの内臓部分にはアンプやらラジオやらレコードプレーヤーが仕込まれていて、文字通り良い声で鳴くのである。
在学中からバンドを組み、一時は本気でプロを目指したというベーシストでもある。会期中には自作のアンプのスペシャル版でギター演奏も。音楽も美術も機械も知る人、しかも昆虫マニアとくれば心の中に少年を隠し持っている人にはたまらないはず。
征矢剛の父は某児童図書の名編集長として知られていた人。母は詩人となれば今日の彼の活躍は、父母と過ごした幼少時代に用意されていたのかもしれない。
子供の頃夢見た世界を、大人のシニカルな感性で作るという甘くない冒険物語を今、征矢は生きている。
オンラインでリンクしている画像も併せてご覧頂きたい。
https://greatmountain.jp/soya/online/
http://www.tokyo100.com/soya/online/
TOKYO Bunjinga 薫風献上ー文人画の風II
2020.6.8(月)〜14日
12:00〜19:00 最終日〜17:00
文人画の系譜を宋元、明清、江戸と三期に分けて勉強しようという試みの二回展、明と清の画家研究の扇子展が今日から。
その歴史的流れの座学を担当してくれた野地耕一郎氏(ペンネーム不忍忍)から以下の文を寄せていただいたのでそのご紹介から。
銀座の柴田悦子画廊での新たなシリーズ画会「文人画の風」は、有為の日本画家たちが中国唐~元代の文人画に倣った扇面画の制作から始まった。SeasonⅡとなる今回は、文人画が大きく展開した明代に焦点を絞り、沈周から文徴明、唐寅といった呉派を中心に奇想派の徐渭や董其昌、清初まで生きた石濤や八大山人まで、その画法・筆法を学んだ成果を問う会となろう。幸いなことに、コロナ・ウィルス禍となる直前、東博と書道博で開催された「文徴明とその時代」展を熟覧できたことが、きっと作家たちの力となったはずだ。
「倣」の理念に依拠して展開した明代文人画に改めて倣った現代の扇型の世界の中に吹く風は、きっと豊かな歴史と新しい薫りを多く含んでいる。
本展の画家たちが倣った明末清初の文人たちの扇面の裏側には、自作の水墨を描いたものが添えてあるので、これも日を改めてお披露目することに。
まずは、コロナの余波の中で無事開催出来たことを奇貨としよう。
香川亮 彩墨画展 ー沖縄県立芸大研究発表
2020.5.25(月)〜30(土)
12:00〜19:00 最終日〜17:00
コロナ対策緊急宣言解除のタイミングで、香川亮展が今日から。
今展に先駆けて、5.11(月)〜14(木)の間沖縄県立芸術大学当蔵キャンパス附属図書・芸術資料館で過去作も含んだ大作中心の展示が開催されているが、その折の挨拶文からまずご紹介する。
現代日本画における伝統と現在を研究のテーマとして、沖縄の美しい自然の風景を、まるで私のスケッチブックの絵が、そのまま広がった様な風景画として発表させていただきます。LIVE感覚でご高覧頂けましたら幸いです。
彩墨は、古来より中国顔料として伝来し南画や文人画として用いられて来ました。近代以降は、広く日本画の絵具として用いられました。彩墨とは、鉱物性顔料や染料等を膠で練り墨状にした物です。さまざまな色の彩墨があります。
(後略) 香川 亮
1986年設立の沖縄県立芸大に、多摩美大院卒直後に赴任して以来の年月、香川亮はこの地で研究と指導を続けてきた。2017年には版画研究の分野で東京日本橋の小津和紙ギャラリーと当画廊二箇所にて発表。しばらくぶりの東京での展示に、さらに意欲を燃やして選んだ研究テーマは「彩墨画」だった。
準備段階で一度スケッチを見せてもらったが、地の利を生かした本島•離島への取材は膨大な量で、しかもその一枚一枚が隙間なく真黒に描き込まれたものであったことに驚いた。
沖縄は、いうまでもなく総天然色カラーの南国である。日本画の岩絵具にはない色ばかりのこの島を、彩とはいえ墨である絵具で表現しようというのも、この地ならではの歴史を踏まえてのこと。
今月11日から予定しておりました 會田佳惠子展は
来年2月1日(月)〜7(日)に
延期いたします。
尚、25日から開催の
香川亮展は
画家不在の状況下ですが通常通り展示する予定です。
世界的なパンデミックとなった新型コロナcovid-19感染拡大防止協力のため、銀座の画廊街もひっそりと静まりかえっています。
医療関係者、並びに通常生活維持の為に働かれている関係者の方々には心からの感謝を捧げるものです。
一刻も早い収束&終息を願うばかりですが、人との接触を避けるという唯一の防止策の前には手も足も出ません。
そこで猫の手を借りて、オンラインショップ「悦子の店」を開く事にしました。猫百態を集めるべく作品募集もします。また、ご自分の愛猫を描いて貰いたい方にもお応えしていきます。
少しずつ、この他にも特集を組んでご紹介するアイテムを増やしていきますのでまずはこちらの画像でひと時の安らぎを。
悦子の店 https://gsfr3.app.goo.gl/CnU3tW #BASEec
柴田悦子画廊
今月の柴田悦子画廊
線と余白の間-それぞれの結界-
2020.4.4(土)〜11(土)
12:00〜19:00 日祝〜18:00
最終日〜17:00
新型コロナウィルス禍の只中ではありますが、今週来週の柴田悦子画廊は換気・消毒を徹底しつつ開けております。
かねてから「線」に卓抜な才を示している画家に「余白」の意識を問う展覧会をしてもらうべく準備してきたものです。
選んだ画家は三人。
足立正平
立尾美寿紀
佛淵静子
独自に活躍する画家たちが、自分の結界をどこにどう結んでいくのか、比べてみることで更にそれぞれが際立つ事を企図しました。
以下、案内状に寄稿して下さった早稲田大学准教授・立尾真士氏の一文を添えます。
絵画の「はじまり」とはいかなるものか。あるいは、はじめられた絵画に「おわり」はあるのか。
ともあれ、まずは線が刻まれなければならないだろう。原初が空白だとするならば、そこに線が引かれたとき、絵画は開始(はじまり)を迎える。点と点を結ぶ線がひと筆、ふた筆と延ばされ、交わり、ときに消され、重なり合う。幾多の線の複層が、界域を生む。
しかし、かたちづくられた界域が線に
充たされることは、ついにない。線を描き、界域をつくりだす筆はまた、余白を生み出す。空白に対峙し、作品の完成(おわり)へと至るために開始(はじまり)の線を刻む画家は、ひと筆ごとに、原初の余白を縁取るのだ。とすれば、絵画を眼差すときに私たちもまた、界域をかたちづくる線と余白のあいだの、そのたびごとの「はじまり」に邂逅しているのである。
三人の画家がいる。画家によってひとまずのところ完成(おわり)とみなされた作品たちは、それぞれが線と余白によってかたちづくられた界域である。と同時に、それぞれの界域が交叉し、結ばれ、或いは分け散じるとき、そこにまた線と余白があらわれる。それらの線と余白のあいだへと誘われた私たちは、新たな原初(はじまり)の痕跡に触れるであろう。
絵画の界域が、空け開かれる。
立尾 真士 TACHIO Makoto / 文学研究者
第4回 Le Vant de La Villeルヴァンドラヴィル展
2020.3.22(日)〜28(日)
12:00〜19:00 最終日〜17:00
多摩美大日本画科を1976年卒業のメンバー4人によるグループ展。
金井ノリオ
クリバヤシツネオ
斎藤弥
平岡栄二
多摩美大が上野毛校舎から八王子に移転しての二期生である。この頃は本館一棟に寮があるくらいであったらしい。
また上級生がいないため、学生数が圧倒的に少なく各科入り乱れて濃密な関係だったと聞く。
そして何より日本画科には荒井(松任谷)由美がいた。
その後、それぞれの道を歩んだのち、4年前に結成した会の序文にはこのような記載があった。
荒井由美の『あの日に帰りたい』がヒットした頃、同じ青春時代を私たちは過ごした。歌の中の「光る風 草の波間を駆け抜ける…」がフランス語版では「Le Vant de La Ville」(都会の風)と唄われている。私たちは再び都会の波間を駆け抜けようとしているのか
大山奈々子展「寄る辺のない」
織田梓展 〜山だより〜里だより〜
八幡幸子展「みどりの牧場」
2020.2.24(月)〜3.1(日)
12:00〜19:00 最終日〜17:00
身近な動物たちの眼差し、四季の草花、登山したことのある思い出の山等をモチーフに日本画の絵の具を使って心象風景を制作しています。 八幡幸子
八幡幸子は2004年多摩美大・大学院日本画修了後、恩師平松礼二先生の元、「吾の会」「飛の会」や中之条ビエンナーレなど、大作中心のグループ展を中心に発表してきた画家である。
今展は、満を持しての初個展。
150号の作品をはじめ、愛らしい動物たちの力作が並んでいる。
聞けば、多摩美大の前に東京農業大学で家畜の飼料等を研究していたのだとか。
取材は近くの動物園らしいが、虎やライオンではなく豚や山羊、猫やアルパカなど人間に寄り添って役に立ってきたものたちだ。
さらに驚くべきは、東農大時代は山岳部で7000m級の世界の山々に挑戦してきたのだとか。描かれた動物たちがまったり寛いでいる場所は、実は5000mくらいにあるベースキャンプという。
崑崙山脈や、パキスタンのナンガパルパット、フランスのシャモ二ー針峰群などを登りながら目に焼き付けてきた風景と、愛すべき小動物を巧みに画面上に同居させ、なんともほのぼのとした情感の作品に仕上げた作品群。
つぬけの会 vol.5
デパートリウボウ7階美術サロン 武井好之日本画展 「沖縄百景」vol.8
2020.2.11(火)〜17(月)
10:00〜20:30 最終日〜17:00
デパートリウボウ7階美術サロン
那覇市久茂地1-1-1
098-867-1291(直通)
「沖縄百景」と題して出会った人々や風景・花々を描いている武井好之の同シリーズ8度目の展覧会。
本島だけで、もう百景は描き終わり、次の百景を目指した宮古・八重山シリーズ
は端緒についたばかりだ。
今回は取材で何度も訪れ、作品にも度々描いてきた首里城の復興再建の一助になればと、ささやかなチャリティイベントを企画した。
沖縄の人を描くー似顔絵イベント
明日12日から17日最終日まで
午後13:00から17:00
1956年生まれ
東京藝術大学大学院日本画専攻修了
池田美弥子展ー月暦図ー
2020.1.27(月)〜2.2(日)
12:00〜19:00 最終日〜17:00
案内状に添えられた画家の言葉から
ー花と花、家と家、海と、空と、言葉と言葉、あれもこれもつなげて暦を作ったら、どんな一年になるだろうか、、。
武蔵野美術大学日本画科卒後も、一貫して鳥瞰図、俯瞰図にこだわって製作してきた池田美弥子の新作展。
今回は描く絵をイメージするとともに言葉が浮かんできた、という。絵と言葉を等価に考え、並列して展示する構想もこの度初めての挑戦だ。絵と言葉の間を行き来しながら、創造の泉に触れてみるのも楽しい。
冒頭の言葉にあるように、メインの屏風は花と花、家と家が切れ目なく連続し、いつの間にか季節が変わり、町も変わっていく趣向である。
学習院大学•佐野みどり先生の教室を聴講し絵巻物についての研究から、雲間の景色を「覗く」ように見る、事にとても興味を持ったとの事。
在住する茅ヶ崎と近隣の鎌倉の、見知った風景と人々の暮らしのありようが、今様(湘南)洛中洛外図として描かれている屏風を眺め、いや「覗いて」見てほしいと作者は切に願っている。
平野俊一展 In The Garden-Roses-
近年 In the Garden.シリーズを展開する平野俊一が描いた究極の薔薇の園。
寺院本堂を荘厳するための屏風絵制作は今回で二点目となるが、前回の「杏の園」二曲一双を上回るスケールの作品となった。
大小の薔薇の花々の乱舞する中を逍遥するかのような目眩く世界が画廊内に展開している。
屏風の屈曲が醸し出すずれと絵の内部の遠近のずれが濃密に絡み合い、秘密の花園内に閉じ込められている気分、というわけだ。(もちろん、さりげなく薔薇のコロンを振りまいているが)
初日の今日は、その秘密の薔薇園で差し入れの沖縄泡盛の宴。島では時を経た泡盛をその芳しい香りから「花酒」と称するが、まさしく少し早い花見酒となった次第。
1984年多摩美大日本画科卒
多摩美大日本画科 第14回 堀文子教室同窓展
2020.1.12(日)〜18日(日)12:00〜19:00
日祭日は18:00 最終日は17:00
昨年2月に永遠の旅路につかれた堀文子先生を偲びつつ、多摩美大日本画科・堀文子教室の同窓5期による展覧会をいたします。先生の遺された言葉や思い出を胸に刻み、それぞれが一層の研鑽につとめる場といたしたいと思います。
新年恒例となった堀文子教室同窓展も早いもので14回目を迎えました。
100歳まで現役の画家として、数々の展覧会を開催されていた先生の足元にも及びませんが、一期生は古希を迎え五期生も50歳の坂を越しながら年々歳々賑やかに制作を続けています。
先生から受け取った折々の言葉を皆で共有し、それを遺産としてこれからも各々の画業に反映していくつもりです。